「くも膜下出血」だった父-2

2024/07/11

40日間の意識不明から、目覚めた父に、四肢麻痺は出ませんでしたが
物事の『認識力』が、全てに関して抜けていました。

目覚めてすぐに、先生が病室で父にしたのは
両腕を左右に広げて、ゆっくり目の前で左右の人差し指が合うか確認していました。
何度やっても、ものすごいゆっくりやっても、当時は左右の人差し指が合うことはありませんでした。

意識が回復してすぐは、脳を使うことは極力避けて
新聞も本もTVもラジオも、遠ざけていました。

字もしばらく読めなくなっていました。

全く記憶がなくなったわけではなく、なんか、認識ができない感じでした。
数字の感覚もめちゃくちゃで、たとえば「スイカ1個、45万円くらいかな・・・・」
と、冗談ではなく、マジで言ってました。

人の認識はできてたみたいですが、もちろん喋り方も変わっていました。

 

入院は、4.5ヶ月はしていたと思います。
退院してやっと帰ってきた父は、以前の私の知る『父』ではありませんでした。
あらゆる所が、変わっていました。
 

先に書いたように、父は四肢麻痺や言語障害が出なかったのですが
顔は明らかに、覇気がなく、虚な表情でしたが
側から見ると、以前と変わらず「大したことなくてよかったね。」状態でした。

それが、多分本人を大きく傷つけたと思います。
仕事に復帰してからも、周りは、以前の仕事のできる父を期待して、色々任されたのでしょうね。
でも、『考える』『想像する』『ハキハキ喋る』『行動する』という、
得意だったことが全てできなくなってしまったのです。

公務員なので、役職も落ちないし、クビにもならない。
それは、本人にとっては、ありがたいけど苦しいだけだったみたいです。

本当に、花形のように働いていて、『ゆくゆくは市長に』とかとも言われてた人なのに
できない自分に、もどかしかったと思います。

期待されて、私の中学のPTA会長にもなっていましたが、こなせるわけありません。

仕事は思うようにできない、他の人の期待にも応えられない

仕事場では窓際族になり、何もしない毎日が続いていたようです。
役職もあからさまには落とせないので「課長補佐」になり
その後、父にあまり負担のない、仕事場をあてがってくださったみたいですが

それでも多分あまりうまくいかなかったんだと思います。
早期退職をせざるを得ませんでした。

本人は、お酒にのがれ、家庭内はメチャクチャになっていきました。

 

くも膜下出血は、再発しやすい病気なので、
5年間はずっと大量の薬と、経過観察の通院を繰り返していました。

「くも膜下出血をした人の、子供達は普通の人の7倍発症率が高くなります。」と、
脳外科の先生にも言われました。
なので、私は常に「発症」するかもしれない。という思いは頭の片隅に入れています。
現に、残念ながら、伯母や従兄弟がくも膜下出血で倒れています。
今のところ、私にはその兆候は出ていませんが。

 

父は、手術しなかったので、自己回復能力に頼るしかありませんでした。

しかし、人間の体とは不思議なものですね。

CTを撮ると、父の脳の一部は、明らかに死んでいるようなのですが
他の部分が長い年月で補って、普通の父に戻っていきました。
と言っても、30年もかかりましたが。
父は73歳で、膀胱癌で亡くなりました。

お葬式には三百人を超える方達が弔問に来てくださり
当時から仲の良かった友人の方が
「随分お元気になられてましたが、現役の時の7割くらいですね。」
といい意味で、話してくださいました。

しかし、完全復帰というまではいかくても、自力でも7割も回復した父に驚きでした。

 

ま、年齢的に、落ちてきた感は否めないでしょうけどね。

 

父が、お酒に逃げていた時は、本当に家庭内が無茶苦茶で
私の、中学高校時代は、友人には言っていませんでしたが「暗黒時代」でした。

でも、中高生の私には「嫌悪感」しかなかった父の姿も
父の倒れた、42歳の時に『働き盛りに病気で働けなくなる』という思いは
体感できなくても、十分想像できるものでした。

 

病気は、本人はもちろん、家族を巻き込んで
大きな負の連鎖を巻き起こしがちです。
でも、なってしまったものは仕方ないので、再発しないようにとか
病気を家族全体で、どう受け入れていくかで、その後がずいぶん違っただろうと思います。

我が家は、『喪失感は強すぎて、残ったできる能力を喜んであげてなかった。』と思います。
家族で、励まし合いながら、父の心労を少しでもわかってあげれれば
父も母も、私や妹の暗黒の時代は和らいでいたことでしょう。
可哀想なことをしました。私も子供だったので、できなかったですが。

 

もう、父はいませんが、病後30年よく頑張ってきたと思います。

そして、時間がかかっても、人間の能力は復活するのだと、
身をもって証明してくれた父でした。

父は、とてもイケメンの人でした。

 

脳の疾患は、いつだって突然襲ってきます。
すぐに病院にってください。
「正常バイアス」が働いて、手遅れにならないように。。。。。。

ランキングに参加してます。
よろしければ、soraをポチッとお願いします。

にほんブログ村 犬ブログ MIX中型犬へ

にほんブログ村

コメント